医療現場では、診察・看護・受付などの「施術」だけでなく、空間そのものから安心感を与えることが大切です。色彩心理学の観点から、待合室や診察室に取り入れる色は、患者様の心理状態や感情に影響を与えます たとえば穏やかな青や緑は、緊張や不安を和らげ、落ち着いた空間を演出します。しかし、色にはそれ以上の力があります。それは、「人の個性」や「感情」にアクセスできるツールとしての側面です。ここで紹介したいのが、カラータイプ理論とプルチックの感情の輪という2つの心理モデルです。
▶︎ カラータイプ理論で“個性に寄り添う色選び”
カラータイプ®理論は、13色をベースに、そこから決断・創造・協調・堅実の4つのタイプに分類する色彩心理の枠組みです 。
タイプ | 色の特徴 | クリニックでの活用例 |
---|---|---|
決断タイプ(黒・赤・橙) | 意志が強く、スピード感がある | スタッフのやる気向上、院内ポスター色に |
創造タイプ(紫・ターコイズ・黄) | 感性豊かで個性的 | デザイン性の高い掲示物や案内表示に |
協調タイプ(グレー・水色・ピンク) | やさしさ・共感を重視 | 小さなお子様や女性向けの待合空間に |
堅実タイプ(茶・青・緑) | 安定感・信頼感 | 診療カウンター、受付のベースカラーに |
事務長として、スタッフの個性を尊重する環境作りに、カラータイプ理論を活用できます。たとえば、協調タイプのスタッフが多いクリニックでは、水色や淡いピンクをアクセントに取り入れると、「寄り添う」姿勢が自然に伝わります。これにより職場の居心地が向上し、患者様への配慮も深まります。
▶︎ プルチックの感情の輪で“色×感情を読み解く”
ロバート・プルチックの感情の輪は、8つの基本感情とその強度、反対感情との関係性をカラーで表現したモデルです。
例えば、「不安(恐れ)」と「信頼」が混じる感情は、患者様の「不安だけど安心したい」という複雑な気持ちを示します。壁や椅子、標識などで使う色によって、その“心の余白”に配慮した環境を作ることで、患者様が感じる緊張を穏やかに和らげることができるのです。
また、スタッフ間のコミュニケーションにおいても感情知性(Emotion Literacy)が向上します。ある出来事への反応を「怒り」ではなく「苛立ち」と認識するだけでも、多様な感情に気づき、対話がしやすくなるというメリットがあります。
▶︎ 実践ポイント:クリニックでできる色活用術
- 診察室の壁に淡いブルーやグリーンを基調に
緊張を和らげる色を選ぶことで、患者様のリラックス感が高まります 6seconds.co.jp。 - 受付カウンターにアクセントカラーを導入
患者様の緊張を和らげつつ、スタッフの個性(協調タイプを意識)や院のブランドカラーを反映。ポップで親しみやすい印象にも。 - スタッフ個性に合わせた色小物選び
名札や文具、エプロンなど、個々のカラータイプを意識して選ぶことで、職場のチーム力がアップ。 - 感情の輪を用いた色の議論をスタッフ会議に取り入れる
「この出来事でどう感じた?」を色で表現しながら話し合うことで、感情理解と職場コミュニケーションが深化。
📝 まとめ:色を通じて“信頼と共感”を紡ぐ
色は単なる装飾ではなく、心の土台をつくる大切な要素。
カラータイプ理論で「個性」を意識し、プルチックの感情の輪で「心の声」を拾い上げることで、クリニック全体が患者様にもスタッフにも優しい空間へと昇華します。
事務長として色を意識的に取り入れることは、目には見えなくとも着実に「信頼」と「安心感」「共感」を生み出す原動力となります。今日から少しずつ、色の変化を取り入れてみませんか?