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「介護保険証について」

 厚生労働省は、介護被保険者証の交付方法の見直しを検討しています。これまで65歳になると全員に一律で介護保険証を交付されていましたが、今後は要介護認定を申請した時に交付する方式へと切り替える方向です。目的は、使われないまま保管されて紛失したり、自治体に余計な事務負担がかかったりする状況を改善することにあります。

 この見直しは、行政コストを減らすだけでなく、現場業務の効率化にもつながり、今後整備が進められる「介護情報基盤」との連携を見据えた合理化の第一歩とも言えますが、ここで見落としてはいけないのが、介護保険制度そのものが十分に理解されていない現状です。特に若い世代では「介護保険証って何?」「届いたけれどどう使うの?」と感じている人も少なくありません。実際に介護が必要な状態であっても、本人も介護者も制度を理解していないために適切な支援に結びつかないケースが存在します。

 今回の制度改正は「交付方法の合理化」だけで終わらせず、制度の存在や役割をもっと分かりやすく伝えるきっかけにする必要があると言えます。地域の説明会での伝達や相談窓口も大切ですが、それだけでは十分と言えません。テレビや新聞、インターネット、SNSといった人目に触れやすい媒体を活用し、誰にでも理解できる形で介護保険という制度の情報を丁寧に発信する取り組みが求められています。 介護保険制度は、高齢社会を支える基盤そのものです。今回の見直しを「負担軽減」だけでなく「制度理解の促進」とセットで進めていくことが、取りこぼしのない支援体制づくりに必要な対応であると言えます。

 

原田 和将

一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。