今回は、療養担当規則の第20条(診療の具体的方針)は、レセプトの査定にも深くつながりのある内容です。
第20条(診療の具体的方針)
第20条 医師である保険医の診療の具体的方針は、前12条の規定によるほか、次に掲げるところによるものとする。 1 診察 イ 診察は、特に患者の職業上及び環境上の特性等を顧慮して行う。 ロ 診察を行う場合は、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならない。 ハ 健康診断は、療養の給付の対象として行ってはならない。 ニ 往診は、診療上必要があると認められる場合に行う。 ホ 各種の検査は、診療上必要があると認められる場合に行う。 ヘ ホによるほか、各種の検査は、研究の目的をもって行ってはならない。 |
イ 診察は、特に患者の職業上及び環境上の特性等を顧慮して行う。
診療録の記載上の注意事項において、「職業」欄には受診者の職種名を記載し、「職務」欄には、療養の給付の原因となった傷病が、職務上の事由による取扱いに該当するか否かを記載することが義務付けられています。元々は、療養担当規則8条及び22条において、下記の様式第一号(1)の1~3は診療録に必ず記載しなければならない事項とされています。
「職業」については、療養担当規則に『職業上及び環境上の特性等を顧慮して』診療を行うことが求められています。つまり、個々の患者の具体的な仕事内容や生活環境等を確認して、「特性=その方に合わせた」治療を行わなければならないとされています。自宅の構造上、駐車場から階段を登らないと玄関にたどり着かない場合は、歩くだけでなく階段を登れるようなリハビリを行わなければ自宅に入れないことになります。歩行だけでなく、字を書いたり、話したりする職業についても同様です。これらのことは、患者や家族にとって、治療が終了し退院が決定した安堵感よりも不安や不満が勝る要因にもつながります。だからこそ、医師だけでなく治療にかかわる職種には、患者の生活環境も考慮して診療計画を立てることが求められています。
「職務」については、「仕事上の疾病=仕事に起因する疾病」は労災保険で給付することになり、医療保険では給付されません。通勤途中の事故についても労災保険給付の対象となります。ただし、労災保険の給付には、事業所による「現認」とそれに基づく労働基準局の「労災認定」が必要となります。
能見 将志(のうみ まさし)
診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。 診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。